<Foveonの高感度画質>


更新頻度が低いですねぇ〜 まあ、ぼちぼちやっていきます。

最近、なんとなく中古の一眼レフを見て回っているのですが、2008年に発売されたCCDを採用したモデルは、今でも十分画質的に通用するレベルだと思いますねぇ。特にその時期の上位モデルではCMOS化が進んでいましたが、低感度(ISO400まで)で比較すると、同画素数では明らかにCCDの方が良い結果が得られています。CMOS化の利点と言えば、消費電力の低減、高速読み出し、スミアが出ない、固定パターンのノイズが出る為にリダクションしやすい、等がありますが、どれも画質的に有利になるものではないんですよねぇ・・・ 利点である高感度画質も、当時の画像処理技術では十分に生かしきれておらず、確かにCCD比でノイズは少ないのですがどうしてもエッジが溶けてしまっているのです。

最近では映像エンジンの処理能力の向上や処理技術の向上、果てはローパスフィルターレスと言った具合に解像力を向上させる努力がなされて、低感度・高感度共に及第点に達しています。画の緻密度で言えば、1400万画素そこそこの2008年CCDモデルより上で、高感度も「これでISO3200?」と言うレベルまで来ています。

ですが、2008年のCCDモデルであれば、高感度も目くじら立てるような画質ではないのも確か。と言うわけで、物色しているのですが・・・ (以前、一眼レフはまだ買わないって言いましたけど、中古の値段ならアリかなぁと思ったもんで)

そうなると、私の手元には高感度に強いカメラが相変わらず無いことになります(笑)。 まあ、物色中の年のモデルならISO800でも問題なく、1600も許容範囲かなってとこなので、特に問題にもならないと言えばそうなんですがね。どちらにせよ、いくら高感度が強くても低感度よりは画質が低いので、最新モデル買ってもISO1600止まりで使うことになるかもしれませんし。


ですが、やっぱり「いざ」と言うときに高感度が使えないのは痛い。と言うわけで、ようやくタイトルに辿り着きました(笑)。 そうです、Foveonの高感度を如何にして使いこなすか。今回はそんなお話です。


さて、ご承知のように、いや、知らない方の為に一応説明しますが、Foveonという撮像素子は、一般的に(センサーが一般的では無いですが)高感度に弱いとされています。実際それは事実で、現実的なISOで行くと400がせいぜいと言ったところ。

どうして高感度がダメかと言うと、ISO800から顕著に「シマシマノイズ」が現れるのです。シマシマノイズって、こんなんです。


SIGMA DP1x ISO1600 f/4 SS1/10



これは、DPx世代のセンサーから採用されたAFE(アナログフロントエンド)※と言う、高感度特性を改善する仕組みが原因のようで、ISO400の画質が大幅に改善した代わりに、それ以上の感度では逆に悪化してしまったと言われています。

「本末転倒じゃねぇか」

とよく言われていますが、現実的に多用するISO400が実用レベルに引き上げられたのは素直に改善だと思いますがねぇ。まあ、そんなこんなで、原因が何にせよ、ISO800以上を使うのは勇気が要るのが現実です。


※AFE(アナログフロントエンド)とは
通常、ISO感度を上げる際には、センサーから受け取った信号を後段のデジタル回路によって増幅します。この際、同時にノイズも大きく増幅されてしまうのは想像に難くありません。AFEは、デジタル符号化の前に、アナログ回路レベルでの信号増幅を行うので、バックグラウンドノイズが入り込みにくいために、従来のFoveonより高感度画質が向上しやすいとSIGMAは考えているようです。


ですが、今年の初めごろに、無謀にもDP1xで星空の撮影に果敢に挑んでいたときに、不思議な現象に出くわしていたのです。

星空の撮影には、なるべく明るくする為に長時間露光を行います。そうすれば、低感度でも十分な明るさが得られて、星が綺麗に写るわけですね。しかし、DPは15秒までの露光しか対応していないので、必然的にISOを上げる必要が出てきたわけです。そのときに撮影したものが、コレ。


都会じゃ、まともに撮れない・・・



どうです?どれくらいの感度で撮影したか分かりますか? 実はISO3200です。ついでに、今回見つけた方法を使えば、このくらいまで撮れますと言う作例も。


SIGMA DP1x ISO3200 f/4 SS1/5



いかがです? 今までの先入観が間違いであったと錯覚するほどの出来栄えだと思うのですが。え〜、何をしたかといいますとね、結論から言うと「あえて露出オーバーで撮る」です。え?良くわからないって?

まぁ、そう慌てずに聞いてください。上で天体撮影の例を出しましたが、これは15秒の長時間露光です。そして、露出計では1段ほど露出オーバーだったのです。これを現像してみたら、良い結果が得られたんですねぇ。最初は何故か分かりませんでした。しかし、以下のように冷静に考えれば、納得の行く結果だったのです。


まず、Foveonというのは、構造は多少複雑ですが「CMOS」という半導体素子で、昨今の多くのデジタルカメラが採用しています。もう一つ、最初にお話した「CCD」というのが有るんですが、こちらは内部的にはかなり異なる方法で情報を読み出しています。

難しい話を端折って、かつノイズの特徴に絞って考えると、CMOSは「バックグラウンドノイズが比較的多く常にあるが、固定パターンで除去しやすく、高感度でも特徴は変わらない。」。対してCCDは「バックグラウンドノイズは少なく、パターンは不定、高感度では顕著に増加する。」というものです。

・・・さて、難しい話を抜きにしても尚、分かりにくいのが、私の話の特徴です。お付き合いください。

まあ、一歩ずつ説明していきましょう。まず、CCDから見ていくと、バックグラウンドノイズが少ないとあります。これは、撮像素子が信号を得たとき、「信号(S)」と「雑音(N)」があり、これを「SN比」といいますが、これ以外に信号を受け取っていなくても常にセンサーに潜在するノイズがあり、これを「バックグラウンドノイズ」と言います。(これが多いと、結局SN比は悪化します)

これが低感度では少ない、ということは、必然的に低感度で高画質を得られやすくなるのです。逆に、高感度ではSN比が悪化するので、CMOS比で画質が劣ります。今回注目したいのが、この「バックグラウンドノイズ」なのです。

さて、次にCMOSですね。「常にバックグラウンドノイズがある」とあります。つまり、低感度でSN比が良いときでも、そそれに関係なく、常に出ているということです。ですが、CMOSというのは画素ごとに信号の読み出しを行っているので、ノイズの特性も画素ごとで現れます。つまり、ノイズのパターンはほぼ一定で、ノイズリダクションで比較的簡単に高精度で除去できます。また、高感度でもSN比は維持しやすいので、画像処理さえしっかりすれば、CCDよりも全体として良い結果を得られるのです。


さて、FoveonもCMOSなので、低感度・高感度問わずにバックグラウンドノイズがあります。ただし、SN比が非常に良い状態、つまり低感度では信号にかき消されて、殆んど見えません。しかし、低感度でも暗部(影の部分など)ではノイズが認められます。(これも重要)

感度を上げていくと、まず暗部からノイズが増加して行き、段々と縞状のノイズが乗り始め、最終的にノイズまみれの画像になります。しかし、現像していれば分かるのですが、ISO3200でも明るい部分ではノイズがあまり出ていません。


つまり。

SN比は悪かったとしても、バックグラウンドノイズのレベル以上にまで画素を感光させてノイズを隠蔽すれば、画像の荒れやFoveon特有の縞ノイズを抑制できると言うことです。

さらに、例えば真っ暗な画像を撮影したとします。このとき、殆んど露光時間に依らずに一定量のバックグラウンドノイズが現れます。これは、現像時に露出をマイナスに振ることで、軽減することが出来ます。(ノイズ自体が暗くなる為)

ここまで来れば分かりますよね。

まず、バックグラウンドノイズを超える信号を素子に与えて、かつ露出オーバーとする。この時点で、かなりのノイズは隠蔽されています。さらに、現像時に露出を適正値にまで下げれば、「信号(S)」が適正値になると同時に、「雑音(N)」は十分に下げることができるのです。つまり、SN比を現像の時点で改善する事ができると言うわけです。特にFoveonは、白飛びがRAW現像のときにかなりの確率で救えると言う特徴もあるので、この荒技が通用するのでしょうね。


こういうことだったのですね。考えてみれば簡単なものです。使い方さえ分かれば、もう怖いものはありません。どんどんISO3200で狙っていきます。こんなんとか。


自宅近くの温泉へ友人と行ったとき。
中間トーン部にノイズは見られますが、気になるほどではない。
ISO3200



こんなんとか。


天然温泉らしい。こちらもISO3200。ノイズ感より粒状感。



大判プリントや、作品として狙っていない限り、十分以上の出来栄えです(むしろ粒状感が生かせる場合もありそう)。ちなみに、これらは撮影時に露出補正で「+2.0」に設定し、シャッター速度1/25から1/50を得て撮影しました。この暗さでこれだけのシャッター速度が得られるのは、特に手振れ補正を持たないDPにとってはありがたいですねぇ。まぁ、DPのおかげで手振れしない撮り方が身に付き、SS1/6で手ブレせずに撮影できるようになりましたが・・・


露出補正ですが、実際に撮影に出かけてみて思ったのは、「飽和寸前」にまで上げることが重要と言うことです。そのほうが、現像のときに大きくノイズを減らせます。ですが、あまり明るくするとSSが落ちて結局手振れするので、それだったらISOを一段下げたほうが良かったりもします。この辺の兼ね合いは、経験で判断するしかなさそうですね。今の段階では、ヒストグラムで確認しながら、慎重に露出を決定しています。


あとSPP(Sigma Photo Pro)に以前追加された「ノイズリダクション」も一応は使えます。ただ、期待したほどの効果は得られないし、輝度ノイズを除去しすぎると解像感を著しく損なってしまいます。まぁ、シャープネスを上げればそこそこ良くはなりますが、最終手段ですね。

特に、縞ノイズに関してはノイズリダクションでは除去しきれないのですが、これを除去する裏技も見つけておきました。この縞ノイズは、「緑(グリーン)」と「赤(マゼンタ)」で構成されています。しかも、ある程度エッジを持った形で存在しているので、これを「フリンジ除去」でかなり軽減できます。

多少色味は薄くなりますが、「フリンジ除去」で「グリーン」にチェックを入れ、「適用範囲」を「0.7」、「適用量」を「0.8」から「1.0」にすると、面白いように縞ノイズが消えます。もちろん、やりすぎれば彩度が低下するなどの副作用が強く出ますが、上手く使えばかなりクリアな画像を得ることが出来ます。(上の作例も、これを適用しています。)

マゼンタの方も同様に、条件によってチェックを入れて見ます。ただ、経験上マゼンタの方はグリーンよりも出現率が低い場合が多いので、通常は使わないほうが、彩度を維持すると言う意味でも良いのかも知れません。


まぁ、このように、Foveonであっても使いようで高感度も実用レベルにまで持っていくことができるようです。



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