<フィルターの種類と、ろ過の仕組み>


・ろ過の種類
まず、一口にろ過といっても種類があることを知っておいてください。
ろ過には大きく分けて3種類のろ過方式があります。1つ目は、物理ろ過です。これは、目で見て分かるような不純物を漉し取るろ過です。しかし、アクアリウムでのろ過は、物理ろ過はそれほど重要ではありません。
最も重要なのが、2つ目、生物ろ過です。これは、生物にとって有毒な物質、「アンモニア」を分解して水槽内から除去する役割を担います。このろ過部分をどれだけ安定させられるかが、かなり重要な要素になってきます。
3つ目は、化学ろ過です。生物ろ過と違って、有害物質を吸着してしまおう、というものです。活性炭がその代表ですね。しかし、このろ過ではろ過材の寿命が極端に短い上に、吸着量の限界を超えると、一度吸着した物質を再度放出することもあり、慣れてきたアクアリストにはおすすめ出来ません。
最近は「麦飯石」が出回っており、これは再利用することも可能なようなので、一概には言えないとも思います。化学ろ過を取り入れるかどうかは、アクアリストの好みによるところが大きいです。



・物理ろ過
これは先ほどお話したとおり、目で見て分かる「ゴミ」を取り除く為のろ過槽です。「マット」などと呼ばれる綿のようなものから、スポンジでできたものもあります。僅かながら生物ろ過の機能も果たしますが、ゴミを取り除くという役目ゆえに、結構すぐに詰まってしまいます。
物理ろ過は基本的に無くても問題ありません。ですが、立ち上げ直後のにごりや、水槽内を触ったときの舞い上がったゴミを直ぐに取り除いてくれるのは物理ろ過なので、ろ過槽の1つを割り当てておくのがいいと思います。

・生物ろ過
これが最も重要なろ過槽となります。水槽内で発生した有害なアンモニアを、亜硝酸を経て硝酸塩という比較的無害な物質に変化させます。最終的に硝酸塩は窒素として空気中に放出され、アンモニアを起源とする物質が完全に水槽内から除去されます。詳しいお話はこちらからどうぞ。
ろ過材は多孔質リング等が市販されており、おそらく最も用いられているのではないでしょうか。ほかにもちょっとした工夫でろ過能力をアップできるので、それは「フィルター」の項でご紹介いたします。
このろ過を如何に安定させるかが、最も重要です。

・化学ろ過
これは、生物ろ過のようにアンモニアを水槽内から除去するのではなく、活性炭のような超多孔質な物質を用いて、アンモニアのような毒性のある化学物質を吸着させて水中から除去します。
しかし、毒性の化学物質を吸着できる量にも限度があり、それを超えると逆に吸着した毒性物質を放出することもあり、寿命に気を使う必要があります。フィルターの種類については後述しますが、上部フィルターや外掛け等ろ過材へアクセスしやすいタイプ、もともとろ過能力の低い内部フィルター等では活性炭を併用してろ過能力アップを図るのもいいと思います。



・フィルター
まず、フィルターの種類について。
フィルターには大きく分けて、上部フィルター、外部フィルター、外掛けフィルター、内部フィルター、スポンジフィルター、底面フィルターの6種類があります。

ろ過能力としては、外部フィルターが最も高く、それ以下おおよそ、上部≧底面>外掛け≧スポンジ>内部 という順番です。ただし、底面は使用条件がそろえば、絶大なろ過能力を発揮します。


>>外部フィルター
 ポンプとろ過槽が別の、セパレートタイプです。奥の青っぽいものが一体型です。左の灰色の箱がクーラーです。

水槽の外に、バケツのような大きなろ過槽を置き、ホースを使って水槽内の水を引き込んでろ過槽を通し、水槽内へ戻します。ろ過槽の大きさに制約が少なく、ろ過槽の容量を大きくとることに成功しています。
その為、他のフィルターに比べて遥かに高いろ過能力を持つ上に、ろ過材も専用の形状である必要は少なく、自分でろ過材を自由に組み合わせる楽しみもあります。ろ過は生物ろ過がメインです。ろ過槽が大きい水槽の強みですね。
内部の形状は、ろ過材を入れるカートリッジがいくつか縦に積み重ねたようになっており、それぞれのろ過材を水が順番に通過するようになっています。

主に60cm以上の大型水槽で用いられます(最近では小型水槽向けの外部フィルターも発売されています)。
また、水槽用クーラーを設置する際には、この外部フィルターが必須になります。

ろ過材ですが、綿での物理ろ過1槽、目が粗めのスポンジでの物理ろ過1槽、残りのろ過槽を全て生物ろ過に割り当てるといいと思います。
生物ろ過のろ過材ですが、市販のものを用いるのであれば、多孔質リングのようなものを用いることになると思います。慣れないうちは扱いやすい市販のろ過材が良いと思います。
ですが、フィルターの扱いに慣れてくると、他のろ過材を色々と試すことになると思いますが、そのときは「大磯砂」を試してみてください。元々はろ過材ではなく底床材ですが、ろ過材としても優れた性質を持っています。例えば、表面にはバクテリアの棲み付くための多孔質な構造があります。また、多くのろ過材は段々と崩れてきてしまって、再利用には向きませんが、大磯は石であるがゆえに半永久的に再利用できます。
更に、敷き詰めた大磯は物理ろ過としても優秀な「隙間」を形成するので、マット等の寿命の短いろ過材を使う必要もなくなります。

ただし、市販のろ過材は水に入ったときに中性になるように調整されていますが、大磯は元々が底床材であり、中性ではありません。モノによりますが、アルカリ性に傾いてしまうことが多いです。ですので、水質調整の勘が身に付くまでは市販のものを使用することをおすすめします。

外部フィルターは、ポンプがろ過槽内に組み込まれているものと、ポンプだけ独立して水槽内に設置するタイプがあります。
前者は水槽内がすっきりして、スペースも確保できますが、「呼び水」というろ過槽内に水を呼び込んでポンプに注水する作業が必要になります(自動呼び水機能があるタイプもあります)。また、水面より低く(高さは説明書に書いてあります)設置する必要があり、置き場所が限られてきます。
一方後者は呼び水作業は必要なく、他の一般的なフィルターと同じように使えます。水面より低く設置する必要もありません。ただし、結構大型のポンプを水槽内に設置しなければならず、少々邪魔です。ろ過槽の容積は、同じクラスの一体型フィルターと比較すると、大きく確保されています。

また、外部フィルターは、給水→ろ過→排水の過程で水が空気に触れることがなく、エアレーションが別で必要となります。水草水槽ではこの空気に触れないという特性から、強制添加した二酸化炭素が逃げないという理由から最も一般的に用いられています。

値段は、60cm水槽用では6000円〜15000円ほどでしょうか。少し高価です。


>>上部フィルター
 右側が上部フィルターです。夏場はフタを取ることで、気化熱で冷却できます。

水槽上部に、幅が水槽と同じ、奥行きは水槽のおよそ半分、高さが10cmほどの大きさの箱型のフィルターを置くタイプです。ろ過能力も比較的高く、水槽の上部に設置できるために、スマートにまとまります。
外部フィルターに比べて小型ですが、ろ過槽も3〜4槽備えられていることが多く、うまくろ過材を組み合わせれば結構安定した水槽を組み上げられます。

セット水槽で入っていることが多く、最も扱いやすいフィルターだと思います。また、ろ過槽に水が注入されるときにシャワー状になって散布されるので、大量の空気を巻き込みます。そのため、特にエアレーションを行う必要もありません。
ろ過材の自由度もそこそこですが、そのうちろ過槽の絶対的な容量不足を感じるかもしれません。

ろ過は、初期構成では物理ろ過、化学ろ過がメインです。物理ろ過にろ過槽を占有させているので、生物ろ過にはほとんど割り当てがありません。ですが、後に自分で全てのろ過槽を生物ろ過に割り当てれば、ろ過能力が結構上昇します。

値段は、60cm水槽用で3000円〜5000円ほどです。


>>底面フィルター
 これを底床材の下に置きます。これはエアリフトタイプのものです。

底床材の下に設置するフィルターで、底床材そのものをろ過材として用います。ですので、場合によっては外部フィルターよりもろ過容積を稼ぐこともできます。ですが、底床材をろ過材として使用するがゆえに、底床材はほぼ大磯砂に限られ、ソイルのようなものは不向きです。
また、途中でフィルターを掃除することは事実上不可能で、フィルターの掃除=水槽のリセット と思っておいたほうがいいでしょう。

このフィルターは、エアレーションの力で水をくみ上げるエアリフト式と、ポンプで組み上げる方式があります。
また、このフィルターは単体使用だけでなく、例えば上部フィルターの吸入口と直結することで、上部フィルターのろ過能力を強化することも出来るのです。

このフィルターは、手軽に強力なろ過を得られるということで良く勧められますが、単体使用ならまだしも、元々ろ過能力が高い外部フィルターに直結させることも勧められたりします。
外部フィルターはろ過能力が大きく、メンテナンスの手間が掛からないのが魅力です。それなのに、たかが底面フィルターが詰まった程度で水槽をリセットする羽目になったら、折角の外部フィルターが泣きます。底面ろ過って、意外と詰まりやすいですよ。

私の経験上の話ですが、底面ろ過を他のフィルターに直結して強化を図る場合、上部か外掛けが適しているように思います。外部に直結しても、特にろ過能力が不足しているわけでもなかった為に、あまり恩恵を感じず、結局詰まってリセットすることになってしましました。直結しないにしても、外部フィルターを設置している水槽なら、特に底面を入れる理由は無いように感じています。

ですが、単体使用でなら十分使用する価値があると思います。他のフィルターに比べて驚くほど安価ですし、構造的にも破損するような機械構造は持っていません。
メンテナンスは面倒ですが、超安価で外部フィルター並みのろ過能力を、うまくセットすれば得られることを考えれば、良いフィルターだと言えると思います。

値段は、60cm底面を全てカバーできるサイズで、1000円ほどと驚くほど安価です。しかし単体で使用する場合、ポンプやエアリフト用のエアポンプは同封されないことが殆どなので、良く確認してから購入しましょう。


>>外掛けフィルター


水槽の「ふち」にフックで引っ掛けて使用するフィルターです。比較的安価で、ろ過能力もそこそこです。ろ過材へのアクセスも容易です。
安価でろ過能力が高く、扱いも簡単。こう言った理由から意外と売れていたようで、種類も多いです。
ですが、「ろ過能力が高い」というのも、インテリア水槽や小型水槽での話であって、60cm水槽では場違いです。わざわざ外掛けを使う理由は無いように思います。それなら、上部を使ったほうが、値段的にもろ過能力的にも優秀です。
60cm水槽であっても、サブフィルターとして使うのはいいと思います。例えば、水草のトリミング時だけにセットして、巻き上がったゴミを取り除く物理ろ過として機能してもらうような使い方です。

値段は、1000円〜4000円ほどです。


>>スポンジフィルター
 エアポンプに接続して使います。

こちらも、主にサブフィルターとしての役目がメインになると思います。新規水槽立ち上げの為のバクテリア採取や、ゴミなどの浮遊物が多い水槽で物理ろ過を行ってもらうものです。
スポンジの厚みがけっこうあり、生物ろ過としての機能も多少期待できます。ですが、これだけで水槽を維持するのは、少々不安です。

スポンジとパイプしかないくせに、結構高価です。
値段は、エアポンプなしの単品で2000円ほどです。


・良く使われるフィルター
それぞれのフィルターには特徴があり、それに合わせて使用される傾向があります。

熱帯魚水槽ではエアレーションの必要も無く、ろ過能力もそこそこ高い「上部フィルター」や、飼育数が多い場合や安定性が欲しいときなどには「外部フィルター」が用いられることが多いです。

水草水槽では、二酸化炭素の強制添加を行うことが多く、エアレーションを行うと折角添加した二酸化炭素が逃げてしまうので、ろ過の間に空気に触れることが無い「外部フィルター」が用いられます。

それ以外のフィルターは、コンパクト水槽で主に(メインフィルターとして)使われるもので、60cmでは一般的ではないと思います。
60cm以上の水槽を立ち上げると、最終的には外部フィルターに行き着くことが多いようですし、私もそうでした。外部フィルターであれば、どのような水槽を立ち上げるときでも対応できますし、結果的に上部フィルターを買って遠回りするよりは、60cm水槽を買ったときに外部も揃えてしまうといいように思います。


今後のアクアリウム計画に合わせて、最適なフィルターをお選びください。


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